2014年10月31日

ブンデス兵科記号 その2

前回に引き続いて兵科記号のまとめを。

ブンデス兵科記号 その2
(第272空挺支援大隊ですが山岳猟兵大隊のBv206の整備を受け入れているようです)


ブンデス兵科記号 その2
こちらは山岳系の兵科記号。山岳系部隊を表す意匠は枠の下方に設けられた小さな三角形。

歩兵の意匠と組み合わせると山岳猟兵に、偵察の意匠と組み合わせれば山岳偵察部隊に。
山岳偵察部隊としてはGebirgsaufklärungsbataillon 230 (第230山岳偵察大隊)が挙げられます。

山岳猟兵の記号にHが追加されると山岳におけるエリート中のエリート、高所山岳猟兵小隊になります(本来は小隊規模を表す3つの点が枠の上に付加されます)。

山岳に戦車、というのはなかなかユニークですが現在ではGebirgspanzerbataillon 8 (第8山岳戦車大隊)という部隊が存在します(活動は一部のみ)。

あまり詳しくは調査していませんが多彩な役割の部隊が多いので山岳系兵科記号のバリエーションはかなり多いものと思われます。




ブンデス兵科記号 その2
お次は偵察関係の兵科記号。

V字型のブーメランのような意匠はドローン=無人機を表しています。偵察部隊の意匠と組み合わせればLUNAやKZOなどの偵察ドローンを運用する無人機偵察部隊を表す記号となります。

パラボラアンテナを意匠化した記号はレーダー部隊。ドローン同様、偵察部隊の意匠と組み合わせるとレーダー偵察部隊となります。

矢印が3方向に伸びている意匠はFeldnachrichten部隊です。いまだになんと訳していいか分かりませんが今回は「前戦情報部隊」にしてみました。

偵察部隊に右向き矢印を合体させた記号はFernspäherです。こういった矢印系の意匠はBW独自のものかもしれません。

偵察部隊とはすこし異なりますが、装甲砲兵の意匠を組み入れた記号は観測装甲砲兵となります。「観測」を意味する意匠は別に存在するのですがBeobachtungspanzerartlleriebataillon 131 (第131観測装甲砲兵大隊)ではこの記号が用いられていました(現在は第131砲兵大隊)。これはかつてArtillerieaufklärungsbataillone 131 (第131偵察砲兵大隊)と呼ばれていたころの名残でしょうか。

余談になりますがBeobachtungsartilleriebataillon 131 (1994~)→Artillerieaufklärungsbataillon 131 (2002~)→Beobachtungspanzerartilleriebataillon 131 (2008~)→Artilleriebataillon 131 (2014~)と20年間で4回も名前が付いた部隊です……。





ブンデス兵科記号 その2
おまたせしました、空挺系の兵科記号です。

円弧と逆三角形を組み合わせた意匠はパラシュート部隊を表します。これと歩兵の記号を組み合わせると降下猟兵に。

パラシュート対戦車部隊はパラシュート部隊の記号と対戦車部隊の記号から成り立っています。対戦車部隊(戦車猟兵)の記号は「対戦車」の意味を持つ三角形と「ロケット兵器」の意味を持つ記号(上下に2つ連なった「^」)で表されます。パラシュート対戦車部隊は空挺旅団に置かれ、TOWなどの対戦車誘導弾を搭載したクラーカ、ウィーゼルを運用していました。(ヴィーゼル等の車両はパラシュート降下ではなく主にヘリや固定翼の輸送機で運ばれます)

パラシュート対戦車部隊として第25、26、27の各空挺旅団に第283、262、272パラシュート対戦車大隊がそれぞれ置かれていましたが、現在は降下猟兵大隊の第5中隊(重降下猟兵中隊)に組み込まれていますので戦車猟兵と同様に目にすることはないと思います。(形態的には第262、272パラシュート対戦車大隊が2001年に中隊規模に縮小、2002年にそれぞれ第262、272空挺支援大隊=Luftlandeunterstützungsbataillonに組み替えという形)


パラシュートの意匠と右向きの矢印を組み合わせた記号はFallschirmspezialzugのものです。おそらくBWオリジナルの記号。この部隊は降下猟兵大隊の本部中隊に置かれ、パラシュート降下部隊の本隊に先駆けてフリーフォールによるドロップゾーン(ヘリ展開に先駆ける場合はランディングゾーン)の確保、周辺地域の偵察、航空機誘導などを行う部隊です。英軍のパスファインダー小隊と同じ役割ですね。
余談ですがヘリによる空中機動展開を行う第1猟兵連隊にもLandezonenaufklärungsgruppe(ランディングゾーン偵察グループ)と呼ばれるパスファインダー部隊が存在します(兵科記号は不明)。

空挺工兵空挺偵察部隊空中展開部隊を示す記号との組み合わせで表されます。

EGB部隊は国際的にはレンジャー型部隊として認知されるようで、記号もレンジャー部隊のものが用いられています。

空中展開部隊の記号と迫撃砲を表す記号を組み合わせると空挺迫撃砲部隊となります。「♂」マークは迫撃砲を表す国際的な記号で、横線が2本追加されたものはNATO規準としては「中迫撃砲」を示すものですが、BWにおいては「重迫撃砲(120mm)」のシンボルとして扱われます。

空挺迫撃砲部隊としては第25、26、27の各空挺旅団に第250、260、270空挺迫撃砲中隊がそれぞれ置かれていましたが、第250空挺迫撃砲中隊はKSK創設に伴って第25空挺旅団ごと解散、第260、270空挺迫撃砲中隊は2001年に現在の各降下猟兵大隊の第5中隊(重降下猟兵中隊)に組み込まれました。




ブンデス兵科記号 その2
ここで第261降下猟兵大隊のStabskompanie=本部中隊(第1中隊)の編成を見てみましょう。(構造は少々デフォルメしているので完全に正確ではありません)

(本部中隊は大隊を運営するための様々な機能を備えています。K9以外の記号はすでに解説済みですが、K9も憲兵同様そのまんまです。空挺のK9部隊はSpezialdiensthundezugと呼ばれており、人間を追跡するための部隊と爆発物探知の部隊から構成されています)

本部中隊に限らず何らかの本部(師団本部や旅団本部、中隊本部など)の役割をもつ部隊の記号は枠の上方が塗りつぶされます。ただしNATO準拠では塗りつぶしません。

中隊本部(Kompanie-Führungsgruppe=第1中隊の本部)も同様です。本部の本部というわけで少しややこしいですね。塗りつぶしの下部に突起が1つありますが、この突起があることにより「中隊の本部」であることが分かるわけです。すなわち突起が2本であれば「大隊の本部」、3本であれば「連隊の本部」、×印であれば「旅団の本部」ということになります。それぞれの本部の規模に違いはありますが、例にとった中隊本部の場合は分隊(Gruppe)規模です。

ここで、「あれ?第1中隊は『大隊の本部』じゃないの?」と思われた方もいらっっしゃると思います。「大隊本部」、つまり大隊司令官がいるところは概念的には各中隊の上部にあります。
ブンデス兵科記号 その2
↑大隊本部の表現(一例)

ブンデス兵科記号 その2
(中隊規模の第1戦車師団本部。こういう表現もあります)








ブンデス兵科記号 その2
最後に特殊な部隊の記号を。コマンド中隊はかつて降下猟兵大隊に存在した特殊部隊の前身です。





今回はなかなかに複雑怪奇な記事となってしまいましたね……。補足、修正等がありましたらよろしくお願いします。

兵科記号に関してはもう少し続きます。

その1

その3



タグ :兵科記号

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Posted by Nekotin at 19:08│Comments(0)編成とか
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