2022年02月27日
Kampfhose KBS

前回に引き続きIdZ-ESの新型衣料です。
といいたいところですが放出品は入手出来ておりませんので代打でLEO KÖHLERの民生衣料「Kampfhose KBS」を取り上げます。
連邦軍の調達上は単に「Kampfhose」と呼ばれているようです。
これまで主に特殊部隊向けに供給されていたEinsatzkampfhoseをベースに設計しているようで、共通点が多くあります。

タグにKBSとありますがこれはKampfbekleidungssatz Streitkrafteのことでしょう。
LEO KÖHLERが官給品を真似て民生品として世に出したということだと思いますが、どれほど正確につくられているのでしょうか。
LEO KÖHLERは素材レベルで微妙にアレンジしちゃいますからね。

円い膝当てや改良型のカーゴポケットなどぱっと見の特徴は押さえてあるように見えますが果たして。

腰回り。ベルトループなどはさほど特徴的ではありません。
左右のポケットはボタンフライになっていますがこれは官給品も同じなようです。

脚の内側にはベンチレーション用のジッパーが。例によってメッシュ張りです。

足首回り。内側には擦れ防止のためかナイロン生地が縫われています。
二重裾になっており、内側の裾はメッシュで形成されています。

官給品はメッシュの色が茶色いですが概ね似た構造でつくってあると思われます。

ドローコードのまとめ方が丁寧です。メッシュ裾は大分長いことがわかります。
これは裾の折り込み処理を新しく配備されるハイカットとミッドカットの2種類のブーツに対応させるためなのかもしれません。

脹脛にポケットが付くようになりました。膝を付いたときなどに利用するようです。
底部分はナイロンで補強されているという手の込みよう。

これも官給品に見られる要素ですね。
こんなところに付けて邪魔にならないのかとも思いますが、狭い車内に座っているときなどは逆に出し入れしやすいのかもしれません。

カーゴポケットはEinsatzkampfhoseを改良したような形状です。こちらも底部がナイロンで補強されています。
絞りのためのナイロンテープが内側に通されています。
官給品もテープの色味や質感の違いはあれど同じ構造でしょう(官給品はエラスティックテープかも)。

Einsatzkampfhoseと違い、2つのボタンは隠しタイプです。
ポケットのサイズは多少小さくなっているような気がしますが、その分マチが大きくなっているようにも感じます。
参考サイト:Calpis is Justice
こちらは2014年製なのでまだ膝当てが四角く、脹脛のポケットもないようです。

こちらは2014年ごろに検討されていた資料から。やはり膝当てが四角く、脹脛ポケットもありません。
この時点ではカーゴポケットのボタンは1つで、2つのスナップボタンが併用されています。二重裾もメッシュではありません。
さて全体的な所感ですが、ジッパーや素材色/質感など細かい点を気にしなければ十分代用できるレベルだと思います。
(まだマニアの目が肥えていない段階だからだというのもありますが)
膝パッドは付属しない点は要注意です。
Tschüs!!
タグ :IdZ-ES
2022年02月20日
Combat Shirt SK 5FTD

前回に引き続きIdZ-ES(KBS SK)に含まれる衣料を取り上げます。
こちらは以前3FTD版も紹介したCombatCombat Shirt SKです。
5FTDとなると迫力を感じます。

前回のKampfjacke kurzと似たような様式のポケットですがよく見ると微妙に違う。
仕様を変えているのか年代による違いなのかははっきりしませんが、いずれ答えが見つかることでしょう。

腕の内側にはベンチレーション用のジッパーが。
ジッパータブが暴れないように下腕側に押さえが付くようになりました。

ジッパーを開けるとメッシュになっています。
なかなかの高機能コンバットシャツだといえますが、これを全軍に行き渡らせようとする意気込みも半端じゃない。

肘パッド用のポケットは相変わらず大きくゴツめな印象です。
これのおかげかちょっと甲冑じみたテイストになるんですよね。
トルソー部も相変わらずのぴちぴちピッチです。

肘パッドはこんなにボコボコしていて大丈夫なんでしょうか。
実際のところあまり使ってないのかなとも思います。

ついでのネックゲイター(Staubschutztuch)。これも「Feldanzug, Tarndruck, Einsatz」の一部です。
ブラウンの方は厚手で冬季向けな感じ。オリーブの方はいくらか薄手で通年用と思われます。
19年の中央統制にはオリーブのものだけ掲載されています。

外観上は特に特徴もないのでこういうところで判断するしかありません。

IdZ-ES(おそらく正確にはSystem Panzergrenadier)の先行運用部隊であるPzGrenBtl212から。
2018年頃だったでしょうか、この画像によって初めて5FTDのSKコンシャツを認知したと記憶しています。

昨年のeFP部隊から。もちろんこうした欧州危機対応型の海外派遣部隊でも見られます。
海外派遣を中心とした作戦部隊はもうすっかりIdZ-ESベースの装備になりましたね。
参考サイト:Calpis Is Justice
Tschüs!!
タグ :IdZ-ES
2022年02月12日
Kampfjacke, kurz KBS SK 5FTD

ドイツ連邦軍が新たに用いる戦闘服から、今回はアウターウェアをご紹介します。
IdZ-ESの一部要件として導入された新型戦闘服ですが、NRF指定部隊などではすでにおなじみですね。
こちらは「Kampfjacke, kurz」(=バトルジャケット、ショート)といいまして、これまでの「ブルーゼ」とは一線を画す、戦闘的な印象の衣服です。
kurzがあればlangもあるわけですが、langはよりスモックに近い形状をしています。
これまで兵士たちが自弁してきたような民生の衣類を参考にしたのでしょう、裁断といいポケットといいなかなかにゴツい印象です。
追記:正確には純粋なIdZ-ESモデルではなく、KBS SK版として再設計されたものです。IdZ-ES版のkurzとは異なるカッティングとなっています。

一見して防寒に焦点を当てているような印象もありますが生地そのものはペラペラでオールシーズン通用しそう。
ボディアーマーとの相性を重視しているためか胴回りのポケットは薄い胸ポケットのみ。
そのかわり上腕のポケットに容積があてられています。

特徴的な襟のモコモコ、上でオールシーズンと書きましたが夏場はさすがに厳しいか。
高気温環境下では同じ新型セットに含まれるコンバットシャツを着用するのでしょう。
任務や活動地域に応じて様々な組み合わせに調整することを前提としているようですね。

肩の国旗は健在です。ポケットはベルクロとペン挿しの付いたゴツいやつ。
ベルクロベースは階級章のためだけに最小限といった感じ。まぁ余計なパッチを付けられても統制側は困るでしょうから……

下腕にも小さな容積のポケットが付きます。
腕の内側にはベンチレーション用のメッシュがあり、ジッパーで開閉できます。

脇の下にも同様のベンチレーションが。
この新型ジャケットに比べればこれまでのブルーゼなんてただの作業着です。

胸ポケットは上側ベルクロとサイドジッパーでアクセスできますが、空間は繋がっていません。
容積はあまりなく、あくまで身分証や予防接種記録を収納するためのものでしょう。
胸の中央にはスリップオン階級章のためのタブがあります。
現在ではIdZ-ESに関わる衣料品はKampfbekleidungssatz Streitkrafte(KBS SK)として独自にまとめられるようになったみたいです。
ほぼIdZ-ESと共通らしいのですが、IdZ-ESはHexoniaによる独占的な供給であったのに対し、KBS SKでは3つのメーカが関連しているとか。
ちなみに中央統制ではすでに「Feldanzug, Tarndruck, Einsatz」という項目でまとめられています。
2031年までにKBS SKはすべての兵士に行き渡る計画とのこと(IdZ-ESに関係なく)。
現在のところはVJTF2023の指定部隊(=PzGrenBrig37)に優先配備ということのようです。
ということでこれまでのブルーゼ/ホーゼ式の戦闘服もまだまだ使えますが、戦闘部隊を中心にこれらKBS SKが増えていくことでしょう。
(※とはいえ統制上はまだブルーゼ/ホーゼ式が正式なのでフォーマルな場ではこちらが使われます)
Tschüs!!
タグ :IdZ-ES
2021年12月05日
ドイツ連邦軍のキャリアと階級
ドイツ連邦軍がかねてから検討していた新しい階級、「Korporal」と「Stabskorporal」
この階級への昇進者が表れたことが私の頭の中で話題になっています。
国防省のアカウントから。Korporalがこれまで兵卒の最上位であったOberstabsgefreiterの上位に位置していることが分かります。
ツイッターの担当者もまだ慣れていないのでしょうか、「Koporal」と誤字が。
…………
……………………
………………………………
Korporal=コーポラル(Corporal:英)といえば日本語では「伍長」と訳されることが多く、下士官のうち一番下の階級ととらえられるのが一般的なようです。
NATO基準で見てみるとコーポラルはOR-3もしくはOR-4に相当するそうですが、ドイツ連邦軍においてはすでにこの層を「兵卒」であるところの「Obergefreiter」から「Oberstabsgefriter」までの4階級が占めています。
この兵卒のカテゴリにさらに階級を上乗せしようというのがこの度の「Korporal」とその上位の「Stabskorporal」なのです。
したがって、ドイツ連邦軍におけるコーポラル(Korporal)は下士官に分類されるものではなく、兵卒のさらなる出世のための階級であると理解することができます。
………………………………
……………………
…………
さて、この分かるようで分かりにくい、ドイツ連邦軍の階級とキャリアについて、せっかくですので2015年版「Reibert」(諸兵必携)の「Laufbahnen und Laufbahnausbildung」の項目から読み取って理解を試みてみましょう。
連邦軍のキャリアは階級ごとのカテゴリに応じて4つに区分されています。
(1)兵卒(MANNSCHAFTEN)のキャリア
兵卒のキャリアコースは資格に関係なく、最下の階級から軍務に服したい志願者を対象としています。
標準的な任期は4年間で、入隊条件は義務教育を修了することでです(義務教育は通常15歳までですが入隊時は17歳である必要があります)。
原則として兵卒は管理職ではありません(部隊を率いることは稀)。
適性と必要性に応じて運転手、無線手、あるいは戦車や砲、工兵機器のオペレーターとして部隊に貢献します。
※兵役があった時代、徴集兵は兵卒として入隊していました。
※兵役があった時代も志願して兵卒から軍のキャリアを開始することができました(自主兵役=FWD)。現在でも任期制(SaZ)とは別に自主兵役という形で入隊することができます。
(2)下級下士官(UNTEROFFIZIERE)のキャリア
入隊条件は実科学校(Realschule)の卒業証書かそれ相当の教育レベルです。
任期は基本的に8年となります。
志願者がすでに連邦軍で通用する専門資格を持っている場合、UnteroffizierまたはStabsunteroffizierとしてキャリアを開始することが可能です。
専門資格を持たずに入隊した場合、連邦軍での勤務を通して民間職業で認められた資格を取得することができます。
(いずれの場合もいきなり実務を担うことはなく、まず候補生として基本的な軍事訓練を受ける必要があります)
下級下士官は様々な業務を担います。例えば本部職、修理要員、電子偵察要員、弾薬処理要員、空挺分隊の班長などです。
※このキャリアは正確には「一般専門職下級下士官(UNTEROFFIZIERE des Allgemeinen Fachdienstes)」と呼びます。専門技能を持つことが前提です。
※ちなみにキャリアカテゴリとしての「UNTEROFFIZIERE」と階級名としての「Unteroffizier」は紛らわしいので、この記事では前者を全大文字で、後者を小文字併用で書き分けています。
(3)軍曹(FELDWEBEL)(=上級下士官)のキャリア
軍曹のキャリアには適性と専門資格に応じて2つの形態があります。
・兵務職軍曹(FELDWEBEL des Truppendienst)
ここでいう兵務職(Truppendienst)は戦闘任務など、純粋な兵隊が担う職務のことを指します。
つまるところ兵務職軍曹は管理職(兵士の上官)として働く存在です。
部隊内で教官、教育者、部隊長としての任を担うのですが、これは若い年齢であっても大きな責任を負うことを意味します。
例えば戦車部隊では戦車とその乗組員を率いることもあれば、4両の戦車からなる戦車小隊を率いる場合もあります。
山岳部隊では10名の兵士からなる分隊を率い、軍事スキー、登山、山岳戦闘、山岳救助の教官も務めます。
入隊条件は基幹学校(Hauptschule)の卒業証書か実科学校(Realschule)の卒業証書、またはそれ相当の教育レベルです。
任期は通常12年となりますが、非任期制兵士(Berufssoldat)として働くことも希望できます。
・一般専門職軍曹(FELDWEBEL des Allgemeinen Fachdienstes)
一般専門職軍曹は高度な専門家としての責任を負います。UNTEROFFIZIEREの上位の存在です。
志願者がすでに専門訓練を受けていた場合、Unteroffizier、Stabsunteroffizier、Feldwebelからキャリアを開始することができます。
(※当然候補生として別途軍事訓練を受ける必要があります)
任期と入隊条件は兵務職軍曹と同じです。
※兵務職、一般専門職のほかに軍事専門職というカテゴリがあり医療下士官や軍楽隊下士官もいるのですが当然キャリアは異なります。
※UNTEROFFIZIEREとは「下士官」のことで、場合によってはFELDWEBELもUNTEROFIZIEREに含んで表記することもあります。ややこしいですね。
※上記のような場合は上級下士官(軍曹)を「UNTEROFFIZIERE mit portepee」、下級下士官「UNTEROFFIZIERE ohne portepee」と呼び分けたりします。ややこしいですね。
(4)士官(OFFIZIERE)のキャリア
ここで説明される士官のキャリアは正確には兵務職士官(OFFIZIERE des Truppendienst)のことです。
兵務職士官になるための入隊条件は原則的にアビトゥーア(大学進学資格)、高等専門学校(Fachhochschule)の入学資格、または同等の資格を持っていることです。
これだけでなく志願者は採用試験に合格する必要があります。
原則的に訓練中にハンブルクかミュンヘンにある連邦軍大学のどちらかで学位を取得する必要もあります。
士官候補課程では学科のほか様々な訓練を経て部隊長、教官、教育者としての職務に備えます。
士官の訓練はすべての兵科、軍種で実施され、実践的および理論的な要素を学びます。
各兵科共通の訓練に加え、兵科固有の訓練はそれぞれの訓練学校で行われ、主に任務に即した訓練が施されます。
士官の標準的な任期は13年ですが、非任期制兵士として働くことも希望できます。
※兵務職士官のほかに軍事専門職として医療士官、軍楽隊士官などもいますが当然キャリアは異なります。
いずれの場合も非任期制兵士は原則的に定年まで勤めますが、任期制兵士は満期で除隊し民間企業等に再就職します(これはどこの軍隊も同じことですが)。
徴兵期間を除き12年間任期を務めた兵士は別の公務員として転職できる制度もあるらしく、軍隊上がりの警察官という存在も珍しくないそう。
もちろん任期を最大25年まで延長することも可能です(定年は越えられませんが)。
この度の新階級導入は任期を延長したい兵卒のための、ある意味受け皿的な意図があるのだと思われます。
ここ数年で任期を延長したがる兵卒は増え続けているらしく、2015年の時点で兵卒の平均的任期は8年、今では15年以上の任期も珍しくないとのこと。
長い経験を積んだ優秀な兵卒を新しく制定した階級で切り分け、給与や年金を手厚くしようというわけですね。

4つのキャリアを簡単にまとめるとこんな感じになります(階級は下から上にかけて上位になります)。
各カテゴリの枠を超えて、例えば兵卒が下級下士官や軍曹にキャリア転向することもあります。
珍しいですが軍曹が士官を目指してキャリア転向を図ることもあるそうです。
………………………………
……………………
…………
階級からは組織内の上限関係だけでなく役割や働き方を見てとることができます。
深く調べていくと面白い、奇妙な発見があるかもしれません。
Tschüs!!
この階級への昇進者が表れたことが私の頭の中で話題になっています。
Diese Woche wurden die ersten Korporale der #Bundeswehr befördert. Mit dem neuen Mannschaftsdienstgrad werden Soldatinnen und Soldaten der Laufbahn eine neue, attraktive Karriereperspektive angeboten. Das soll die Motivation fördern und Leistung belohnen. Wo steht der Koporal? pic.twitter.com/qCFmJlImml
— Verteidigungsministerium (@BMVg_Bundeswehr) December 3, 2021
国防省のアカウントから。Korporalがこれまで兵卒の最上位であったOberstabsgefreiterの上位に位置していることが分かります。
ツイッターの担当者もまだ慣れていないのでしょうか、「Koporal」と誤字が。
…………
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Korporal=コーポラル(Corporal:英)といえば日本語では「伍長」と訳されることが多く、下士官のうち一番下の階級ととらえられるのが一般的なようです。
NATO基準で見てみるとコーポラルはOR-3もしくはOR-4に相当するそうですが、ドイツ連邦軍においてはすでにこの層を「兵卒」であるところの「Obergefreiter」から「Oberstabsgefriter」までの4階級が占めています。
この兵卒のカテゴリにさらに階級を上乗せしようというのがこの度の「Korporal」とその上位の「Stabskorporal」なのです。
したがって、ドイツ連邦軍におけるコーポラル(Korporal)は下士官に分類されるものではなく、兵卒のさらなる出世のための階級であると理解することができます。
………………………………
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…………
さて、この分かるようで分かりにくい、ドイツ連邦軍の階級とキャリアについて、せっかくですので2015年版「Reibert」(諸兵必携)の「Laufbahnen und Laufbahnausbildung」の項目から読み取って理解を試みてみましょう。
連邦軍のキャリアは階級ごとのカテゴリに応じて4つに区分されています。
(1)兵卒(MANNSCHAFTEN)のキャリア
兵卒のキャリアコースは資格に関係なく、最下の階級から軍務に服したい志願者を対象としています。
標準的な任期は4年間で、入隊条件は義務教育を修了することでです(義務教育は通常15歳までですが入隊時は17歳である必要があります)。
原則として兵卒は管理職ではありません(部隊を率いることは稀)。
適性と必要性に応じて運転手、無線手、あるいは戦車や砲、工兵機器のオペレーターとして部隊に貢献します。
※兵役があった時代、徴集兵は兵卒として入隊していました。
※兵役があった時代も志願して兵卒から軍のキャリアを開始することができました(自主兵役=FWD)。現在でも任期制(SaZ)とは別に自主兵役という形で入隊することができます。
(2)下級下士官(UNTEROFFIZIERE)のキャリア
入隊条件は実科学校(Realschule)の卒業証書かそれ相当の教育レベルです。
任期は基本的に8年となります。
志願者がすでに連邦軍で通用する専門資格を持っている場合、UnteroffizierまたはStabsunteroffizierとしてキャリアを開始することが可能です。
専門資格を持たずに入隊した場合、連邦軍での勤務を通して民間職業で認められた資格を取得することができます。
(いずれの場合もいきなり実務を担うことはなく、まず候補生として基本的な軍事訓練を受ける必要があります)
下級下士官は様々な業務を担います。例えば本部職、修理要員、電子偵察要員、弾薬処理要員、空挺分隊の班長などです。
※このキャリアは正確には「一般専門職下級下士官(UNTEROFFIZIERE des Allgemeinen Fachdienstes)」と呼びます。専門技能を持つことが前提です。
※ちなみにキャリアカテゴリとしての「UNTEROFFIZIERE」と階級名としての「Unteroffizier」は紛らわしいので、この記事では前者を全大文字で、後者を小文字併用で書き分けています。
(3)軍曹(FELDWEBEL)(=上級下士官)のキャリア
軍曹のキャリアには適性と専門資格に応じて2つの形態があります。
・兵務職軍曹(FELDWEBEL des Truppendienst)
ここでいう兵務職(Truppendienst)は戦闘任務など、純粋な兵隊が担う職務のことを指します。
つまるところ兵務職軍曹は管理職(兵士の上官)として働く存在です。
部隊内で教官、教育者、部隊長としての任を担うのですが、これは若い年齢であっても大きな責任を負うことを意味します。
例えば戦車部隊では戦車とその乗組員を率いることもあれば、4両の戦車からなる戦車小隊を率いる場合もあります。
山岳部隊では10名の兵士からなる分隊を率い、軍事スキー、登山、山岳戦闘、山岳救助の教官も務めます。
入隊条件は基幹学校(Hauptschule)の卒業証書か実科学校(Realschule)の卒業証書、またはそれ相当の教育レベルです。
任期は通常12年となりますが、非任期制兵士(Berufssoldat)として働くことも希望できます。
・一般専門職軍曹(FELDWEBEL des Allgemeinen Fachdienstes)
一般専門職軍曹は高度な専門家としての責任を負います。UNTEROFFIZIEREの上位の存在です。
志願者がすでに専門訓練を受けていた場合、Unteroffizier、Stabsunteroffizier、Feldwebelからキャリアを開始することができます。
(※当然候補生として別途軍事訓練を受ける必要があります)
任期と入隊条件は兵務職軍曹と同じです。
※兵務職、一般専門職のほかに軍事専門職というカテゴリがあり医療下士官や軍楽隊下士官もいるのですが当然キャリアは異なります。
※UNTEROFFIZIEREとは「下士官」のことで、場合によってはFELDWEBELもUNTEROFIZIEREに含んで表記することもあります。ややこしいですね。
※上記のような場合は上級下士官(軍曹)を「UNTEROFFIZIERE mit portepee」、下級下士官「UNTEROFFIZIERE ohne portepee」と呼び分けたりします。ややこしいですね。
(4)士官(OFFIZIERE)のキャリア
ここで説明される士官のキャリアは正確には兵務職士官(OFFIZIERE des Truppendienst)のことです。
兵務職士官になるための入隊条件は原則的にアビトゥーア(大学進学資格)、高等専門学校(Fachhochschule)の入学資格、または同等の資格を持っていることです。
これだけでなく志願者は採用試験に合格する必要があります。
原則的に訓練中にハンブルクかミュンヘンにある連邦軍大学のどちらかで学位を取得する必要もあります。
士官候補課程では学科のほか様々な訓練を経て部隊長、教官、教育者としての職務に備えます。
士官の訓練はすべての兵科、軍種で実施され、実践的および理論的な要素を学びます。
各兵科共通の訓練に加え、兵科固有の訓練はそれぞれの訓練学校で行われ、主に任務に即した訓練が施されます。
士官の標準的な任期は13年ですが、非任期制兵士として働くことも希望できます。
※兵務職士官のほかに軍事専門職として医療士官、軍楽隊士官などもいますが当然キャリアは異なります。
いずれの場合も非任期制兵士は原則的に定年まで勤めますが、任期制兵士は満期で除隊し民間企業等に再就職します(これはどこの軍隊も同じことですが)。
徴兵期間を除き12年間任期を務めた兵士は別の公務員として転職できる制度もあるらしく、軍隊上がりの警察官という存在も珍しくないそう。
もちろん任期を最大25年まで延長することも可能です(定年は越えられませんが)。
この度の新階級導入は任期を延長したい兵卒のための、ある意味受け皿的な意図があるのだと思われます。
ここ数年で任期を延長したがる兵卒は増え続けているらしく、2015年の時点で兵卒の平均的任期は8年、今では15年以上の任期も珍しくないとのこと。
長い経験を積んだ優秀な兵卒を新しく制定した階級で切り分け、給与や年金を手厚くしようというわけですね。

4つのキャリアを簡単にまとめるとこんな感じになります(階級は下から上にかけて上位になります)。
各カテゴリの枠を超えて、例えば兵卒が下級下士官や軍曹にキャリア転向することもあります。
珍しいですが軍曹が士官を目指してキャリア転向を図ることもあるそうです。
………………………………
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…………
階級からは組織内の上限関係だけでなく役割や働き方を見てとることができます。
深く調べていくと面白い、奇妙な発見があるかもしれません。
Tschüs!!
2021年11月28日
Gamaschen

ちょっとしたアイテムですが連邦軍の支給Gamaschen=ゲイターを入手しました。
ゲートル、スパッツなど呼び方は様々ですが主に足首を保護するためのカバーです。
英語圏ではゲイターとスパッツを区別しているようですが、ドイツ語圏においてはGamaschen一択で特に呼び分けていないようです。
海外オークションに出品されていたのを見かけて珍しいなと思って落札したのですが、
国内のショップで普通に取り扱っていましたね……まずは国内市場を確認しましょう。

正式には「Nässeschutzgamaschen」と名付けられていることから
連邦軍では主に防雨用途として位置づけられていることが分かります。
外側の生地は丈夫なナイロン生地で、内側は防水系の素材のようです。
防雨は当然、ブーツの擦過防止や小石の侵入防止にも役立つでしょう。

ジッパーは上から下へ閉める方式で防雨のためベルクロも併用します。
上端には絞り紐が付いており、足首には強めの絞りゴムが入っています。
下側に付いている2本の紐は靴底にぐるっと回して縛るためのものです。
ベルクロを閉じる向きが左右で違うので購入の際は組み合わせに注意。
サイズは長さ40cm、44cm、48cmでそれぞれ太細があり計6サイズ展開。

M2007ブーツに付けてみるとこのようにきれいな円筒形になります。
靴紐の部分までしっかり覆うつくりになっていることが分かります。
用途的にはカットの低い山岳ブーツにこそ適しているのでしょう。

下側に付いている紐は一周回して靴底側ではなく靴紐側で結びます。
こういうのって使っているうちに紐が切れないか心配になりますよね。

下端側に金属のフックが付いています。位置的に靴紐に引掛けるもの?

一般的な追加装備として規定されていますがよく見るのは山岳部隊くらいです。
どの部隊にも支給されるわけではなく指定された部隊にのみ供給されるようです。
状況としてはシンパテックスパーカー/ズボンと併用されることが多い気がします。
雨天時は当然ですが雪がブーツ内に入るのを防ぐためか降雪時にも着用が見られます。

妥当性が分かりませんが空挺学校の人員(?)から。
一応山岳以外の部隊でも見ることはできますね。
Tschüs!!