スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  
Posted by ミリタリーブログ at

2020年11月20日

Lines of Gear

「ファーストライン」や「セカンドライン」といったワードをご存知でしょうか?

「Lines of Gear」などと呼ばれる軍用装備品を分類する際に用いられる概念のことなのですが、意味するところは国や組織によって様々なようです。


ここではドイツ連邦軍関係(※)で広く見られる分類方法について解説します。

※:といっても公式のソースは無いに等しいのでマニア間でのやり取りやショップにおける表記に関する範囲と捉えてください。






Ausrüstungsschichten(Lines of Gear)について

一般的によく見られるのは1st~3rd Lineの3層構成でしょう。


・1st Line

ファーストラインは多くの場合EDC(Everyday carry)やサバイバルキットのことであると説明されますが、ドイツ語圏における意味合いは明らかに異なります。

すばり「生存のために最低限必要な機器」であり、これは
 ・ジャケットやズボン、インナーから防寒着までを含むすべての衣服
 ・手袋
 ・靴
 ・帽子
という位置付けとなります。







アレ、巷で見かける「ファーストライン」とはずいぶん違うな、と感じた方も多いでしょう。
(サバゲーマー界隈では)ベルトキットをファーストラインと呼称する向きもありますが、そのような定義とは大きくかけ離れています。


また「生存のために~」の解釈からライフル等の武器も含める場合もあるそうです。
しかしながら武器の類は装備の構成とはまた別の次元と捉えている方々が多いためか、実際のところそうした分類がなされることは稀です。
まぁ普段私たちが口にする「装備」という単語は武器を除外していることが多かったりしますよね。


以上の点から「戦闘に関わらない状況における必要十分な装備品」とも解釈できますね。
銃を持って戦うだけが兵士の仕事ではないので、戦闘に関わらない部分での階層も明示しておく必要がある、ということなのかもしれません。

プレキャリだのチェストリグだの言う前にまず服を着ろ! というのはなんだか合理的な考え方ですよね。






・2nd Line

セカンドラインは打って変わって「戦闘に必要な装備品」ということになります。

すなわち
 ・弾薬や作戦に必要な機器を運搬するためのベルトキット、ベスト、チェストリグ
 ・抗弾性能や防破性能を備えたアーマー、プレートキャリア、ヘルメット

また
 ・ハンディ無線機(SEM52とかMBITRとか)とそれを補完する機器(COMTACとか)
 ・ゴーグル
 ・ホルスター
なども多くの場合ここに分類されます。







戦闘のための機器を運搬するためのギア(=ロードキャリアー)と捉えておけばよいのでしょう。
ベストやチェストリグは弾薬などをキャリーするためのもの、アーマーやプレキャリは抗弾プレートやソフトアーマーをキャリーするためのもの、という理解のされ方です。

ベルトキットがなぜファーストラインでないのかは上記の理由から明白です。
ベルトキットもベストもチェストリグもそもそも同じ働きをするロードキャリアーなのです。




話が逸れますがベルトをファーストラインへ分類する理屈は、プレキャリやアーマーに対してリスクレベルが一段下がる、という考え方に起因しているようです。
つまりプレキャリやアーマーが必要でない状況や緊急時にそれらを投棄しなければならない状況でも最低限身を守れる装備品をベルトにまとめ、ファーストラインとして分類しておくべきだという発想です。
これはこれで合理的なのかもしれませんがドイツ語圏ではあまり見られません。ロードキャリアーはロードキャリアーとして分類すべきという考え方のほうが明瞭で分かりやすいからでしょう。

(他、ファーストラインは任務によらず常に固定の装備、セカンドラインは任務に応じて変更する装備という捉え方も世の中にはありますがドイツ語圏ではやはり見かけません)






・3rd Line

サードラインは「運搬能力の拡張」であり「戦場である程度長期の活動を維持するための機器」です。

いわゆる背負いもの、リュックやパックと呼ばれる類のものです。
SEM70やPRC117などの大型携行無線機、大型のメディックパックもここに分類されます。

また寝袋や調理器具など戦場での衣食住を支える器機も含まれます。

とにかくセカンドラインに入りきらないものはこっち、という感じですね。









・中間的なもの

なかにはイマイチ分類しづらい品物もあります。

例えばプレキャリに接続するモジュラーバックパックはセカンドラインなのかサードラインなのか実に曖昧なところです。

医療品は、IFAKのような個人的用のものであればファーストライン(衣服)のポケットに収納可能ですし、セカンドライン(ベストやアーマーのポーチ)に入れても良いわけです。
さらに分隊用のものであればサードライン(メディックパック)となるわけですが、このように運用形態によって階層が異なってしまうのは何かと不便です。
医療品はそもそも「ギア」ではないのでライン分類の対象ではない、という意見も頷けます。(サバイバルキットについても同様のことが言えます)

問題は「なに」を「どこ」に収納するかであり、収納したいものと収納すべき場所を混同するべきではありません。
(ファーストラインである衣服にポケットが付いているから、ベストやチェストリグと同じロードキャリアーの類であると捉えるのは少々無理があります)







ようするに

込み入った話になってきましたがようするに、

 1.服を着て
 2.装備を付けて
 3.バックパックを背負う

という重ね着を示すものだと理解してしまえばよいのです。

実際ここで示す「ライン」と「レイヤー」の概念はよく似通っています。

また武器や医療品については別の次元にあり、各ラインには分類しえないと理解しても差し支えはないでしょう。






定義に関わらずLines of Gearは装備を構築するにあたって重要な指標となります。

各ラインの役割と思想を理解できるようになると装備のまとまりもずっと良くなりますし、フォトの観察にも役立ちます。


見た目からスタイリングに入るのも手っ取り早くてお得ではありますが、装備を研究する立場としては「各装備品にそれぞれ目的を与えることで、はじめてそのスタイリングに行き着くのだ」というプロセスは大事にしていきたいですね。




Tschüs!!





参考
STRATEGIE & TECHNIK :ドイツ語ソース、ファーストラインに武器を分類する考え方が紹介されています。

PhotoBW :ミリフォトで見られる装備が各ラインごとに分類されているお馴染みのサイト。

HANDWFFEN UND PANZERABWEHRHANDWAFFEN DIE BUNDESWEHR (書籍) :BWの武器解説本ですが装備品の構成に言及した項があります。

EYES ON TARGET (書籍) :Fernspäher解説本でライン構成について言及しています。こちらではファーストラインに武器とサバイバルキット等を分類する考え方となっています。

  
タグ :装備

Posted by Nekotin at 21:07Comments(0)ドイツ連邦軍考察